私の中に1つの疑念があった。
ことの発端は、寮に新一年生が入寮してきた時だ。かわいい一年生の中に、フクシ君という子がいた。最初は何の変哲もないただの一年生だと思っていたのだが、一緒に時間を過ごすうちにだんだんと違和感を感じるようになってきた。まずは酒の飲みっぷりである。「酒の三冠王」と名高い、勝山(本醸造)・宝っこ・大五郎を水を飲むがごとく、あっさりと飲んでしまうのだ。はじめはもの凄い一年生が入ってきたもんだと思っていただけだったのだが、その人並みはずれた飲みっぷりは感心を通り越して、違和感を覚えざるを得なかった。また、麻雀においてもその違和感は感じられた。先輩がどんなに丁寧に麻雀を教えても、「いや、これが俺流ですから」の一点張りで言うことを聞かない。そして強打。しかし振ったためしがない。とてつもない豪運の持ち主で、やはりおかしいと思った。そして決定的だったのは、平禄寿司に連れて行ったときのことだ。何でも食べなさいと言ったのにもかかわらず、彼は「三冠王にぎり」しか頼まなかったのだ。
このとき私の中である結論に至ったのである。
「フクシ・・・・何者なんだ?フクシ・・・フクシ・・・三冠王・・・俺流・・・フクシ・・・フクシ君?・・あのフクシ君!?」
そう、そうなのだ!フクシ君とは落合フクシ君に違いない!!そうだ!間違いない!!!!とんでもない奴が寮にやって来たな。私は心底震えた。今までに体験したことのないような震えが私を襲った。しかし、この感動を誰かに伝えなくてはいけないと、気力を振り絞り近くにいた後輩に声をかけた。
「おい、フクシって実はあのフクシ君なんだよ!落合フクシ君なんだよ!」
「えっ!?」
「だからフクシっているだろ?あいつのことだよ!」
「何言ってんすか、先輩?」
「はぁ???」
「フクシのフクシって、名字っすよ!」
・・・・・・時として、凛。